AIで職を失った48歳がAIエージェント12体と起業|営業AIの事例と投資を断った理由

AIで職を失った48歳がAIエージェント12体と起業|営業AIの事例と投資を断った理由

AI がらみで仕事を失った48歳が、仲間2人と、AI エージェント12体で会社を始めました。エンジニアも外からの出資もないまま、美容医療の営業向けの AI の道具で売上を伸ばし、投資家から「お金を出す」と言われたときには、それを断ります。

この動画は、アメリカのサム・ブラウンさんたち3人の実話を紹介した回です。Masayume が試した結果ではありません。この記事では、Masayume AI Lab の動画(2026年10月公開・約16分)の内容を、経済誌 Fortune の記事と会社のサイトに沿って要約し、AI エージェントを営業に使った事例と、そこから持ち帰りたい3つのことをまとめます。

この動画で分かること

  • AI がらみで職を失った48歳と、仲間2人の経歴
  • ビールの席の愚痴から生まれた、営業向けの AI の道具
  • 人間3人と AI エージェント12体で回す会社のしくみ
  • 投資家からの出資を断った理由
  • 半年後の会社の姿と、Masayume が持ち帰りたい3つのこと

3分で分かる動画の要約

2025年の夏ごろ、アメリカで48歳のサム・ブラウンさんが仕事を失いました。本人の言葉では、理由は AI がらみ。アメリカでは2026年3月、発表された人員削減の理由で、AI が初めて1位になっています。

そのころ、医療機器の営業マだったベンさん(39歳)は、業界のベテランがビールの席でこぼした「どの道具もうまく動かない。どのクリニックを狙えばいいか、ぴたりと分かるようにしたい」という愚痴を覚えていました。ベンさんが作った道具を、営業マ6人が自分のお金で払って試し、結果が出ます。

2026年の初め、サムさん・ベンさん・ダンさん(56歳)の3人が、この道具の会社を始めました。エンジニアも外からの出資もなく、働くのは人間3人と AI エージェント12体。お客さんの会社では、新しい取引先が大きく増えたといいます。

伸びた会社に、投資家が出資を申し出ます。3人は「そのお金の使い道が思いつかない。お客さん対応には、もう AI がいる」と断りました。半年後の会社のサイトには、日本人にもなじみのある積水ハウスのアメリカの会社の名前も載っています。Masayume は、勝ったのは AI の腕前ではなく経験だった、と話しています。

なお、動画で紹介している売上などの数字は見込みや本人たちの話を含みます(この記事では金額を書きません)。

AIがらみで職を失った48歳

1人目は、サム・ブラウンさん(48歳)。2000年から働いてきた人で、ソフトウェアの新しい会社で幹部をしてきました。2025年の夏ごろ、長年キャリアを築いてきた会社が人を減らすと決め、その1人がサムさんでした。2026年4月の取材で、サムさんは「解雇されたのは9か月前。AI がらみだった」と話しています。

サムさんだけではありません。アメリカの人員削減を調べている会社 Challenger, Gray & Christmas の発表では、2026年3月、人員削減の理由で AI が初めて1位になりました。この発表をまとめる専門家は、「これからの働き手は、ますます複雑な仕事をこなす AI のエージェントを率いることになる」と話しています。この言葉は、あとでもう一度出てきます。

もちろん、本当は別の理由なのに AI のせいにしているだけではないか、という声もあります。それでも、48歳で仕事を失うのは、どこの国でも重い話です。ところがサムさんは、この解雇を「恵み」と呼んでいます。

ビールの席の愚痴から生まれた道具

2人目は、ベンさん(39歳)。アメリカ陸軍で10年、コンピューターを使った情報分析の仕事をしたあと、医療機器の営業マになり、新人賞や成績上位の表彰を何度も受けてきた人です。勝ち続けるほど、ある問題が見えてきました。業界のトップの営業マでさえ、売り込む先を Google 検索と古い表計算と自分の感覚で探していたのです。

ある日、ベンさんは美容医療の営業を長年率いてきたベテランと飲んでいました。ベテランはビールを何杯か飲んだあと、こうこぼします。「どの道具もうまく動かない。誰かが全部まとめてくれればいいのに。ある地域に入ったら、どのクリニックを狙えばいいかがぴたりと分かるようにしたい」。

動画の場面「話は、ある営業マンの、ビールの席から」。「ビールの席」の文字を赤い丸で囲んでいる
道具の始まりは、業界のベテランがビールの席でこぼした愚痴だった(動画の 3:00 ごろ・場面は再現)

ベテランはこの愚痴をすぐに忘れましたが、ベンさんは忘れていませんでした。次の週末、計画を持って電話をかけます。最初は乗り気でなかったベテランも、営業マ6人で試してみることになりました。会社にはこの道具の利用料を払うお金がなかったので、6人は1人ずつ自分のお金で払いました。理由を聞かれたベテランの答えは短く、「うまくいくからだよ」。

営業向けAIの道具でできること

動画のスライド「どこへ、何を持っていくか、行く前に分かる」。その文字と、地図の上で「患者の関心 1位」と出ているクリニックの印を赤で囲んでいる
売り込む先と持っていく物が、行く前に分かる(動画の 5:15 ごろ)
できること中身
売り込む先を並べる郵便番号を入れると、近くのクリニックが売れそうな順に並ぶ
相手の「今」を知るそのお医者さんの患者が、今 Google で何を調べているかが見える
点数を付ける1つのクリニックにつき200以上のデータを調べ、「今買う準備ができているか」と「どれだけ売れそうか」の2つの点数を付ける(会社のサイトより)
商談の練習新人の営業マが AI を相手に商談を練習できる。話し方がまずければその場で直し、間違った答えにはさらに突っ込んだ質問を返す

どこへ何を持っていけばいいかが、行く前に分かる道具です。同僚には「そんなのうまくいくわけがない」と言われたそうですが、ベンさんはこの道具を使ってテキサス州のエルパソで1日だけの実演会を開き、大きな契約を決めたと本人は話しています(会社の売上ではなく、ベンさんが売った機械の契約です)。その後、ベンさんの勤め先は、営業部門全体にこの道具を入れたといいます。

人間3人とAIエージェント12体の会社

3人目は、ダンさん(56歳)。元海兵隊員で、大手の IT 企業などで25年以上、企業向けの営業をしてきました。インターネットの始まりからスマートフォンの時代まで、大きな技術の波を全部見てきた人です。

2026年の初め、テキサス州オースティンで、この道具の会社が動き出します。サムさん・ベンさん・ダンさんの3人が経営のパートナーです。会社の名前は Fathom AI(会議の文字起こしで知られる同じ名前のサービスとは別の会社)。始めるのに使ったお金はごくわずかで、外からの出資はゼロ。エンジニアもいません。その代わりにいるのが、AI エージェント12体です。

AI エージェントとは、質問に答えるだけでなく、自分で調べたり連絡したりして、仕事を最後までこなす AI のことです。12体のうち、記事で中身が分かっているのは2体だけです。

動画のスライド。12体の AI エージェントのうち、記事で中身が分かっている「全国の営業チームのお客さま対応の係」と「2時間ごとに起きて、ライバル会社の動きを調べる係」の2つを赤い四角で囲んでいる。残り10体は記事に書かれていない
12体のうち、中身が分かっているのは2体だけ(動画の 7:25 ごろ)
  • お客さん対応の係:全国の営業チームからの問い合わせに答える。取引先の営業マが、相手をベンさんだと思って話していたら、実は AI だったこともある
  • ライバル調査の係:2時間ごとに起きて、ライバル会社の動きを調べ、報告書を出す。夜中も含めて1日12回

お客さんの会社で起きたこと

最初のお客さんのひとつ、美容医療の会社 Tiger Aesthetics では、会社の話によると、前の年は1年かけても新しい取引先が40件に届かなかったのが、この道具を入れてから3か月で225件になりました。会社のサイトには「同じ営業マ、同じ地域、同じ商品」とも書かれています。変わったのは道具だけ、というわけです。研修の担当者からは、普通なら1週間はかかる下調べ(半径約64kmのクリニックの連絡先・狙う商品・話す台本まで)が、2時間足らずで終わったという声も寄せられています。

Fortune の記者は会社の記録を確かめたうえで、売上のペースを見積もっています。原価や会社を動かす費用がほとんどかからず、売上の大部分が残る形です。

投資家からの出資を断った理由

これだけ伸びると、投資家が現れます。伸びそうな会社にお金を入れるベンチャーキャピタルとの話は、出資の条件を書いた書類のところまで進みました。投資家の見立ては、「この先は、エンジニアのチームとお客さん対応のチームを、ある程度の人数そろえる必要がある」。

3人はここで断ります。理由は、そのお金の使い道が思いつかなかったから。会議を出たあと、サムさんとベンさんは「そんなもの、うちにはいらない。お客さん対応には、もう AI がいる」と言い合ったそうです。

動画の場面。出資の条件を書いた書類(TERM SHEET)に「断る」の判が押されている
出資の条件の書類まで進んだ話を、3人は断った(動画の 9:50 ごろ・場面は再現)

3人は会社の形も、「いつか会社を売って大きくもうける」のではなく、「出た利益を今3人で分ける」形にしました。サムさんは「給料を受け取るのに近い。大きな費用がないから、つぎ込む先もあまりないんだ」と話しています。

同じ Fortune の記事には、カナダのトロントで23歳の若者が率いる3人の会社も出てきます。こちらも早い段階でベンチャーキャピタルのお金を断り、「営業やお客さん対応の担当は、これからも雇うつもりはない」と話しています。48歳と23歳。年は離れていても、考え方はよく似ています。

半年後:会社のサイトに載っていた名前

あの記事から半年。売上の新しい数字は、まだ公表されていません。ただ、会社のサイトには今の姿がこう書かれています(2026年10月に確認)。

  • 創業者は3人、AI エージェントは今も12体、外からの出資はゼロ
  • 今動いているお客さんは5社で、最初の月から黒字
  • 扱う分野は、美容医療から、医療機器、皮膚科や形成外科、不動産へ。企業向けも準備中
  • 見込み客を探して点数を付ける道具、何を話せばいいかを教える道具、仕事全体を回す道具が並ぶ
  • 「私たちは、より良い顧客管理の道具を作っているのではない。仕事を実際にこなす AI エージェントで、全部を置き換えるんだ」という一文

サイトに名前が出ているお客さんは5社。最初のお客さんの美容医療の会社、医療機器の会社、エネルギーのパイプラインの会社など、業界はばらばらです。その中に、日本人にもなじみのある名前がありました。積水ハウスのアメリカの会社です。お客さんの声の欄には、同社の肩書きで「これは文句なしに最高だ」という言葉が載っています。

会社のサイトに載っているお客さんの声。積水ハウスの肩書き(Chief Insights Officer, Sekisui House・2026年6月)で「これは、文句なしに最高だ」と書かれ、その言葉を赤い丸で囲んでいる
積水ハウスのアメリカの会社の肩書きで載っている声(動画の 13:20 ごろ)

もちろん、これは会社が自分のサイトに載せた声で、どんな取引なのかまでは書かれていません。それでも、48歳で職を失った人がいる会社の画面に、日本の大手の名前と言葉が並んでいる。4月の記事には出てこなかった話です。

Masayume が持ち帰りたい3つのこと

AI がらみで仕事を失った人が、AI を12体並べて、人を増やさない会社の経営者になった。これを皮肉だと思う人もいるはずです。記者が記録で確かめたのは売上のペースと利益の割合までで、大きな契約や取引先の件数は本人たちの話です。売上も見込みで、1年分を実際に受け取ったわけではありません。

それでも、この話から Masayume が持ち帰りたいことが3つあります。

  1. 勝ったのは、AI の腕前ではなく経験:業界のベテランがビールの席でこぼした愚痴、25年以上の営業、現場で売ってきた人の目利き。AI は、その経験を休まず回し続ける手足でした
  2. 小さく試した:いきなり会社を作ったのではなく、6人の営業マが自分のお金で試すところから始まっています
  3. 人を増やす前に、AI に任せられないかを考えた:投資家のお金を断ったのは、その答えでした
動画のスライド「03 人を増やす前に、AIに任せられないかを考えた」を赤い四角で囲んでいる。右には投資家に「そんなもの、うちには要らない」と断った言葉
人を増やす前に、AI に任せられないかを考えた(動画の 15:05 ごろ)

最初に出てきた「働き手は、AI のエージェントを率いることになる」という言葉。3人は、それをもうやってみせているのかもしれません。サムさんは自分の解雇をこう言っています。「これは恵みだ。ほかのみんなより一足先にスタートを切れるんだから。誰もが多かれ少なかれ、これを経験することになる。僕は少し早かっただけだ」。

よくある質問

AIエージェントは、営業でどう使われていますか?

この事例では、売り込む先のクリニックを売れそうな順に並べて点数を付ける、相手が今何を調べているかを見る、新人が AI を相手に商談を練習する、といった使い方をしています。会社の中では、お客さん対応と、2時間ごとのライバル調査を AI エージェントが担っています。

アメリカでは、AIを理由にした解雇は増えていますか?

人員削減を調べている Challenger, Gray & Christmas の発表では、2026年3月、発表された人員削減の理由で AI が初めて1位になりました。一方で、別の理由なのに AI のせいにしているだけではないか、という指摘もあります。

この会社は、会議の文字起こしの Fathom と同じ会社ですか?

別の会社です。この記事の Fathom AI(fathom-ai.net)は、テキサス州オースティンの、営業向けの AI の道具を作る会社です。

まとめ

  • AI がらみで職を失った48歳のサム・ブラウンさんが、仲間2人と AI エージェント12体で、美容医療の営業向けの AI の会社を始めた
  • 道具の始まりは、業界のベテランがビールの席でこぼした愚痴。営業マ6人が自分のお金で試すところから始まった
  • 投資家の出資は、「使い道が思いつかない。お客さん対応には AI がいる」と断った
  • 持ち帰りたいのは、勝ったのは経験だったこと、小さく試したこと、人を増やす前に AI に任せられないかを考えたこと

あなたの仕事で、AI に1つだけ任せるなら何を任せますか。まずは、毎週くり返している作業を1つ書き出してみてください。

出典

動画の確認日は2026年10月16日です。売上の見込みや件数には、本人たちの話を含みます。

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